お酒と糖と発酵と触媒

飲食・フード
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何の気無しに、お酒の作り方について調べていたら、次々にわからないことが出てきて、それをまた調べていたら、・・・次々に新しく知るようなことが出てきました。備忘録として、残しておきます。

酒はすなわちアルコール

お酒はいろんな種類があり、原料も作りかたもさまざまで、味ももちろん違いますが、共通点があります。それは、「アルコールが入っている」ということです。

当たり前じゃないか?と言われるかもしれませんが、物事をシンプルに考えるために、単純化してみることにして、ここでは「お酒」イコール「アルコールが入った飲み物」としておきます。美味しさはとりあえず問いません。

で、お酒を作る側の立場で考えると、何らかの原料を使って、どうにかしてアルコールを作らなければいけません。現在、工業用のアルコールは、石油などから化学的に作ることもできますが、人が飲むお酒に関しては、昔とやり方は変わっていません。

それは、酵母菌を使った発酵です。これだけ技術が発展した現代でも、我々は自然の生き物(酵母菌)の力を借りて、アルコールを手に入れていることになります。

酵母菌の呼吸

酵母菌は、カビ菌の仲間で、小さな微生物です。あらゆる場所に存在し、栄養があるものにくっつくと、増殖します。放っておいたモチとかに、青カビが生えますが、それと同じ仲間です。ちなみにウイルスと菌は別物ですのでご注意ください。

酵母菌は、糖を分解して、アルコールと二酸化炭素とエネルギーを得ることができます。これは、人間のためにやってくれているわけではなくて、酵母菌自体が生きていくために、呼吸としてやっていることです。

人間も呼吸をしていますが、酸素の含まれた空気を取り込んで、二酸化炭素を吐きます。それは、酸素を燃やしてエネルギーを得て、代わりに二酸化炭素を出すというしくみです。そもそもは、エネルギーを得るためにやっていることが、呼吸です。

同様に、酵母菌にとって、エネルギーを得るための呼吸が、このアルコール発酵です。酵母菌は、糖を元に、アルコールと二酸化炭素を出して、そこで発生するエネルギーで生きています。

我々人間は、酵母菌が呼吸のついでに出してくれた副産物のアルコールを、ありがたく使わせてもらっている、というわけです。

酵母菌が発酵に利用できる糖

酵母菌は、糖を元にして、アルコールと二酸化炭素を出しますが、この「糖」はなんでもよいのでしょうか。結論から言うと、酵母菌がアルコール発酵できる「糖」は限られます。

人間が食べる食物の栄養素として、炭水化物、タンパク質、脂質などがあり、ご飯やパン、麺類など、穀物が原料の食べ物は、炭水化物と呼ばれます。この炭水化物を「糖質」「糖類」と呼ぶことがあります。人間も含め、多くの動物にとって、糖が、体を動かすためのエネルギーになります。

炭水化物とよばれる食べ物の多くには、でんぷんが含まれています。でんぷんは、小さな糖が何個もくっついた大きな糖の粒のようなものです。

人間がでんぷんが含まれたものを食べたあと、そのままでは体に吸収できないため、唾液や膵液に含まれる消化酵素により分解され、でんぷん→麦芽糖→ぶどう糖と細かくされて、最後のぶどう糖になったものを小腸で吸収しています。

酵母菌の呼吸で利用する糖についても、状況は似ています。でんぷんがまわりにたくさんあっても、そのままではアルコール発酵はできません。糖の粒が大きくて、食べられないイメージです。

でんぷんを細かくしたぶどう糖(または果糖)になると、酵母菌はそれをパクパク食べて、アルコールと二酸化炭素を吐き出すことができます。

アルコール発酵の化学式

酵母菌がパクパク食べられるぶどう糖や果糖は、化学式(分子式)ではC6H12O6と書かれます。

このC6H12O6という一つの化学式で、ぶどう糖も、果糖も表すという。ここが難しい。

ふつう、H2は水素、O2は酸素、CO2は二酸化炭素、H2Oは水、というように、一つの化学式で表す物質は、一つのはずですが、C6H12O6にいたっては、20個以上の物質が存在するそうです。

その理由は、分子の結合のしかたが複数パターンあり、それで性質が異なるからです。

たとえば、C6H12O6でぶどう糖(グルコース)の分子結合を表すとこんな感じ。

(CHO)(C-H-OH)(C-OH-H)(C-H-OH)(C-H-OH)(CH2OH)

これが、果糖(D-フルクトース)だとこんな感じ。

(CH2OH)(C=O)(C-OH-H)(C-H-OH)(C-H-OH)(CH2OH)

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